遺族が逆転勝訴 長崎の在外被爆者訴訟 最高裁判決

日本を離れたことを理由に被爆者向けの健康管理手当の支給を打ち切られた韓国人崔季テツ(撤のてへんがさんずい、チェ・ゲチョル)さんの遺族が、長崎市に約3年間の未受給分の支払いを求めた訴訟の上告審判決が18日あった。最高裁第一小法廷(泉徳治裁判長)は、遺族側敗訴の二審・福岡高裁判決を破棄し、遺族の請求通りに82万7900円の支払いを長崎市に命じた。遺族側の逆転勝訴が確定した。
 最高裁では第三小法廷が昨年2月、ブラジルに移住した被爆者が広島県を相手に起こした同様の訴訟で被爆者側勝訴の判決を言い渡している。この判決を受けて長崎市はすでに請求分を遺族に支払っており、事実上、争いは終わっていた。(中略) 一審・長崎地裁は05年12月、82万7900円の支払いを長崎市に命じたが、福岡高裁は昨年1月、地方自治法に基づく5年の時効が成立しており、請求権は消滅したとして請求を退けた。
 第一小法廷は、「被爆者が外国に出ると手当は受けられなくなる」とする旧厚生省通達を違法と明言して広島県の時効主張を退けた昨年2月の第三小法廷判決を踏襲。「長崎市が時効の主張をすることは信義則に反して許されない」と述べた。
http://www.asahi.com/national/update/0218/TKY200802180436.html

上記の昨年2月の最高裁判決で注目すべきは、補足意見である。

裁判官藤田宙靖*1の補足意見がある。
裁判官藤田宙靖の補足意見は,次のとおりである。
私は,法廷意見に賛成するものであるが,地方自治法236条2項の規定にもかかわらず,本件において消滅時効の成立を認めない理論的根拠について,若干の補足をしておくこととしたい。
信義誠実の原則は,法の一般原理であって,行政法規の解釈に当たってもその適用が必ずしも排除されるものではないことは,今日広く承認されているところである。地方自治法236条2項の解釈・適用に当たってもこのことは変わらないのであって,住民が権利行使を長期間行わなかったことの主たる原因が,行政主体が権利行使を妨げるような違法な行動を積極的に執っていたことに見出される場合にまで,消滅時効を理由に相手方の請求権を争うことを認めるような結果は,そもそも同条の想定しないところと考えるべきである。その意味において,本件のようなケースにおいては,同条2項ただし書にいう「法律に特別の定めがある場合」に準ずる事情があるものとして,なお時効援用の必要及びその信義則違反の有無につき論じる余地が認められるものというべきである。
(裁判長裁判官藤田宙靖裁判官上田豊三裁判官堀籠幸男裁判官那須弘平

上記判決の詳細はこちら→http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=34109&hanreiKbn=01
この方(藤田宙靖裁判長)は結構、補則意見を付しますね。こと地方自治関係となると余計の様子。

*1:言わずと知れた行政法の権威。